上勝小学生ごみ分別を体験

 令和2年9月9日、上勝小学校の4年生7名がゼロ・ウェイストセンター(以下「センター」という)に集まり、約1時間の分別体験学習を行いました。上勝町のゼロ・ウェイストの取組を環境教育として取り入れることで、将来を担う子どもたちに、ごみや環境問題を「自分のこと」として捉えてもらう学びの機会となることを目指しています!

 講師を務めたのは、センターの指定管理を受けている(株)BIG EYE COMPANYの大塚桃奈氏です。センターが新しくなり、大塚氏としてもはじめての環境教育の場ということで緊張されていましたが、小学生にもわかりやすく楽しみながら学ぶことができる工夫がいたるところに!大人でも勉強になるなぁと感じる充実した1時間でした。

 朝10時、バスに乗って子どもたちがセンターにやってきました。最近では見慣れたマスク姿ではありますが、元気なあいさつとともにやってきた子どもたちの手には、かばんや水筒の他に大きな袋がにぎられています。袋から透けて見えるのは学校給食で飲んだ牛乳パックや、お菓子の袋など!実は事前学習でリニューアルオープンしたセンターを見学した際の宿題として、今日の分別体験で使用するごみを各家庭で準備してもらっていました。しかし、家庭ごみというのは自分の生活をのぞかせるものであり、汚れなど気を遣う部分もあるので少し恥ずかしく、あまりもってきてくれないか、もしくは汚れておらずあたりさわりのないティッシュの箱などに偏るのでは…?と大塚氏は予想していました。ところが、実際は予想を超える数や種類のごみが集まり、子どもたちが今日のために準備をがんばってくれたことや、おそらく家では親御さんが協力してくれてたんだろうなと想像することができ、親子で環境教育に関心をもってくれていることが伝わってきました。

学習スケジュール

(日 程)

日程:令和2年9月9日(水)

時間:10:00~11:00

生徒:上勝町小学校 4年生7名

(行 程)

  • なぜ分別するのか?
  • まずはざっくり6分別!(オフィス・ラボ)
  • いざ45分別!(ゴミステーション)
  • 3Rの大切さについて

①なぜ分別するのか?                  

場所:オフィス・ラボ(以下「ラボ」という)

 まずはなぜ「ごみ」について考えるのかを、世の中のごみ処理の状況や環境問題についてスライドや動画を使って説明していきました。大塚氏から「ごみを分別したあと、そのごみはどうなっていると思う?」という質問に対し、「遠い外国に運ばれていく」「無人島に行く」「北海道に行く」などさまざまな意見が出て、あまり近くで処分されているイメージがないようでした。それならばと、日本の最終処分場の様子がわかる動画を紹介!そして、リサイクルも燃やすこともできないごみは国内の陸地に穴を掘ったり、海に投げ込んで埋め立てられていることや、日本のごみの排出量が世界4位であること、日本の最終処分場(埋立地)が満杯になるまで約22年、徳島県の最終処分場は松茂町の海で約13年しか猶予がないことなどを説明。大塚氏は「13年後、みんなが私の年齢になるころには、徳島県のごみは行き場がなくなっているかもしれない」と伝えました。

 そうなったらどうなるのか、という漠然とした疑問が誰にでも浮かびます。現状、日本中のごみが行き場をなくしたときのことはまだ何も決まっておらず、その時がきたらどうしたらいいのかは大人にも誰にもわかりません。だからこそ、私たちはいまできること、例えば「ごみの徹底分別によるリサイクル」や「そもそもごみを生み出さない」方法を考えて取り組んでいく必要があるのです。今回の学習では、こうした世の中の危機的状況やそれに対してできることを、子どもたちに知ってもらい、環境問題への理解と関心を深めてもらうために実施されました。

②まずはざっくり6分別!

場所:オフィス・ラボ

 さて!いよいよ持ち寄ったごみの分別です。今回用意した分別BOXには、「紙」や「プラ」などの環境ラベルが表示されており、ラベルを確認して分別することを意識してもらうための工夫がありました。子どもたちは2人または3人の3グループに分かれて、ラベルを目印に6種類の分別BOXに投入していきました。

*紙ごみ

*缶・ビン・ペットボトル

*プラスチックごみ(環境ラベルあり)

*プラスチックごみ(環境ラベルなし)

*どうしても燃やさなければならないもの

*その他のごみ(他の5分別に当てはまらないもの、または判断がつかなかったもの)

 今回は、ごみのプロフェッショナルであるゼロ・ウェイスト推進員の藤井氏と役場企画環境課の菅氏が、大塚氏も含め子どもたちの心強い助っ人として参加!ラベルがないなど分別が難しいものは判断のポイントなどを聞きながら、協力しててきぱきと分別していき、たくさんあったごみもあっというまにBOXに収まりました。

リサイクルマークはあるかな?

 分別後は、ラベルのとおりに分別できているかをみんなで再確認!ここで要注意なのが、同じ容器包装でも「プラ」マークが付いていない場合がある!ということです。今回でてきたのは、果物を梱包しているネット!明らかに容器包装でありますが、どこにも「プラ」ラベルは見えません。ですが、これは「プラスチック製容器包装」といって生産者が処理の責任を負っているものになるので、環境ラベルのない製品プラとは引取り先(ルート)が違う!簡単に言えば、中身(商品)を包んでいるもの、中身(商品)を使ったら不要となるものが“容器包装”で、中身(商品)そのものが“製品プラ”ということです。このように、一概にラベルで分別することはできませんが、今回のネットのように、わかりづらいものがあるときは現場のスタッフに相談すれば教えてもらえるので安心です! 

※「プラスチック製容器包装」の詳細は下記のリンクから

ティッシュケースのビニールはとるの?これくらいであればそのままでOKです!

③いざ45分別!

場所:ゴミステーション

上勝町の45分別を実際に行うべく、いざゴミステーションへ。目の前にズラリと並ぶ分別用コンテナ。なにがどのコンテナなんだ!となりますが、各コンテナには廃棄するものをイラストで表示しているので、わかりやすい!これを目印に作業を進めていきます。

ゴミステーションへ

分別を進めていくなかでわかりづらいのがプラスチック!実は上勝町はプラスチック類だけで6種類の分別があります。先ほどはプラスチックを環境ラベルの有無で2種類に分別しましたが、ステーションではさらにペットボトルや白トレイなど明確に分けていく必要があります。ここで要注意なのが、容器包装の汚れ具合です。軽くすすいで汚れが落ちれば乾かして容器包装へ。油汚れなどが残る場合は「その他のプラへ」分別します。カップ麺の容器の中には「プラ」ではなく「紙」の場合もあるので、廃棄するときは要確認!

 このように、慣れるまでは一苦労ありますが、学習中にごみを持ち込みにきた町民の方は、みなさんササっと分別して帰っていきます。観察していると、コツとしては①種類が少ない②少量の持ち込みの2パターンありました。家庭である程度分別していれば、そのまま持ち込んでコンテナにいれるだけで済むし、こまめに持ち込む人であれば混ざっていてもすぐに分別できるようです。人それぞれ時短術というか、やりやすい工夫があるようでした!

プラキャップはあっち!

 センターに持ち込まれるのは「ごみ」だけではありません。上勝町では食器や服など自分は不要になったものでも、まだ使えるものは無料のリユースショップ「くるくるショップ」へと持ち込むことを推奨しています。今回は「定規」が「まだ使えるもの」になるのではという話になったので、「くるくるショップ」へ!

☆くるくるショップの利用の仕方

*持ち込み:町民のみ

・持ち込んだ物を図りで計量

・持ち込み日、物の名前、重さを記入

*持ち帰り:だれでもOK

・持ち帰る日付、物の名前、重さを記入

容器包装かな?
くるくるショップ

④3Rの大切さについて

 分別体験が一通り終了し、最後にもう一度ラボに集まって3R「リデュース(減らす)、リユース(繰り返し使う)、リサイクル(再利用)」の大切さについて大塚氏から話がありました。分別することで、そのごみが再生紙やトイレットペーパーなどに生まれ変わることができ、またその分埋立て量を減らすことができます。このように、資源を再活用し循環したものづくりができること、加えて、「そもそもごみを生み出さない」ようにすることも大切であると説明しました。

 ではそのために何ができるか、ということで大塚氏は普段自分が使用している「蜜蝋ラップ」や「へちまたわし」を見せながら、脱使い捨て!を推奨。「蜜蝋ラップ」は使い捨てラップの代わりに何度も使える商品で、ハンカチほどの大きさで少しぺたぺたした質感のものですが、子どもたちはそもそもそういう商品があることを初めて知ったという感じでした。

蜜蝋ラップの紹介

 最後に、子どもたちからは「分別数が多く難しかった、大変だった」「家でもやってみようと思った」、「楽しかった」という感想があがりました。大塚氏は「大人でも分別が難しいときがあるので、そんなときはゴミステーションのスタッフを頼りながら少しずつ覚えていってほしい。また、分別したごみはどうなっていくんだろう、ということにも興味をもっておいてほしい」というメッセージを伝え、体験学習が終了しました。

 このように上勝町では、子どものころから「ゼロ・ウェイスト」に興味・関心をもつ機会が学習のなかに取り入れられています。また、上勝町全体でゼロ・ウェイストに取り組んでいるため、ごみの分別だけでなく、買い物や食事など暮らしのなかで自然とゼロ・ウェイストに触れることができる環境があります。自然のなかで子育てしたい!環境教育に興味がある!ゼロ・ウェイストな暮らしが知りたい!などなど上勝町の暮らしに興味のある方はぜひ一度遊びにきてください(^O^)/

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ゼロ・ウェイストとは…

 最近、私の身近で感じたゼロ・ウェイストにまつわる小話を3つ紹介します。

〇「リサイクルありがとう。」

牛乳パックにメッセージがかかれている、と教えてもらったので見てみたら、飲み口の反対側を開いたところに確かに(°0°)!このメッセージをみたとき「どういたしまして!」と思ったと同時に、ごみを分別することって私たちの責任であって、誰かにお礼を言われることじゃないま、とも思いました。それに、私は分別することはできても新しく生まれ変わらせる技術はもっていません。だから、こちらこそ「リサイクルしてくれてありがとう。」という気持ちで分別することも大事なんだと思います。みんなで優しい気持ちをもってリサイクルに協力していきたいですね!

〇「オーバーシュートデー」

 オーバーシュートデーなるものがあることを最近知りました。2020年の日本は5月12日がその日で、「私たちの使う資源の量が、地球が1年間で再生可能な量を上回ってしまう日」だそうです。今年の1月から半年もたっていない、うれしくない、でも考えさせられる日です。来年はできるだけ遅らせたい!何しよう!と思いましたが、そういえば上勝町にきただけで貢献できている可能性に気づきました。もともと、夏場はエアコンも扇風機も家ではつけていましたが、上勝町にきてからは気持ちいい風が通るのでエアコンは使わないし、涼しくなるもの早いので扇風機すらお役御免になるのが早い。ということは、上勝町に移住者が増えるとそれだけ電力が削減できるし、町はにぎやかになるし一石二鳥なのでは!集まれ上勝!

〇「ギャップ」

 最近聞いた話で私と逆!と思ったのが、上勝で育って町外に就職した若者から「上勝を出たら、分別が少なすぎて戸惑った」という話でした。これはけっこう大事な話で、現状では「上勝にいるからできること」になっている生の声でした。上勝町には高校がないため、子どもたちは進学とともに離れてしまいます。今回のように、子どものころから環境教育を学んでいる彼らが、暮らしの拠点が変わったとしてもギャップが生まれないように、世界中で生産者も消費者も共通認識をもって循環型社会をつくっていけたらいいなと思います。

上勝町役場企画環境課 栗林

おわり

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