ゼロ・ウェイスト研修

こんにちは!役場企画環境課の栗林です。

みなさん明けましておめでとうございます。

年末は職場や家の掃除でバタバタしましたが、年始は雪がちらちらしつつも天気が良く、穏やかな年越しを迎えることができました。

ゴミステーションは31日から2日までの3日間お休みだったので、大掃除のごみ出しをしたい人で前日の30日はせわしなかったみたいです。“そんなに駆け込まなくても、いつでも出せるんですよ!”という現場スタッフの声が聞こえてきそうですね…。(ゴミステーションは年末年始の3日間以外は開いています。)

 さて、今回は11月に実施した役場職員のゼロ・ウェイスト研修についてです。前回の記事で、2030年に向けた新しい「ゼロ・ウェイスト宣言」について発表したばかりですが、職員研修では環境問題の現状やこれまでの上勝町の取組や位置付けについて確認できる内容になっていました。

 講師はゼロ・ウェイスト推進員の藤井園苗さん!藤井さんには、日頃からゼロ・ウェイストに関するメディア対応や視察対応、子どもたちへの環境教育などさまざまな面でお世話になっています。今回は、来町者がどうのような内容を受け取っているのかを知るためにも、来町者と同じような研修内容で実施してもらいました。

 研修後のフィードバックを参考に、今回の研修ポイントを紹介していきます。

ごみの問題

奈良公園のシカの胃に3.2kgのプラスチックごみ

 実際に、死亡したシカの胃から3.2kgのビニールごみがでてきました。奈良公園にはごみ箱がなく、そのせいか食べ物の入ったビニール袋を捨てていく人がいて、食べ物のにおいがするとシカが間違えてビニール袋を食べてしまいます。注1

2050年には海洋中のプラスチックごみの量が魚の量を超える?

 適正に処理されなかったプラスチックごみが海に流出することで、生態系を含めた海陽環境の悪化が引き起こされており、世界中で死んだ海鳥や魚の胃から誤って食べた細かいプラスチックが多く見つかっています。また、網やかごなどの漁具の流出により、水中生物にからまるなどの悪影響も出ています。

 近年、マイクロプラスチック(一般的に5mm以下の微細なプラスチック類)による生態系への影響が懸念されていて、使用するなかで微細にかけてしまったプラスチックが、食物連鎖に取り込まれて私たち人間を含めた生態系への影響も心配されています。身近なところでは、歯磨き粉のスクラブにも使用されていることがあります。注2

日本の埋立ごみはあと20年で行き場を失う?

 びっくりですよね。環境省によると、あとたった20年で日本中の最終処分場が満杯になると報告されています。下のグラフは環境省が毎年報告している“ごみ”に関するデータで、「一般廃棄物処理事業実態調査の結果(平成30年度)」によると、日本の最終処分場の状況は以下のようになっています。

※残余年数とは、新規の最終処分場が整備されず、当該年度の最終処分量により埋立が行われた場合に、埋立処分が可能な期間をいう。注3

残余容量 101,341千m3

残余年数 21.6年

細かくいえば21.6年あるんですが、もっと細かくいえば残余年数は昨年よりも短くなっています…。20年という数字の衝撃がすごいですが、上勝町が利用している最終処分場が約14年というデータが出ているのでさらに驚きです。注4新しい最終処分場をつくることができれば、もちろん寿命は延びるんですが、そう簡単な話ではないようです。

最終処分場を新設できない理由

土地の確保

 まずは土地を確保する必要があります。例えば、上勝町が利用している最終処分場は、松茂町の徳島阿波おどり空港のすぐ隣にある「徳島東部処分場」というところで、海にごみを沈めて満杯になったらコンクリートで埋め立てています。この処分場の面積は15万6000m2で、これは東京ドームの約3倍の広さ。このぐらいの広大で適正な土地を確保して、さらに適正な処分ができるよう設計して建設する莫大な費用の準備も必要です。

環境負荷と住民の理解

 土地探しが難しい理由でもあります。これは最終処分場に限った話ではなく、焼却炉などのごみ処理施設も含め、土壌汚染や水質汚染、生態系への影響など、環境負荷や安全性などを心配した住民の理解を得るのが難しいようです。

上勝町の位置づけ

日本は世界一焼却している国?

世界のごみ焼却ランキング注5

 日本はなんと1位。日本には1,082の焼却施設があって、毎年約80%のごみが焼却処理されています。日本のリサイクル率は20%しかありません。日本は国土面積が小さく埋立地を確保するのが難しいので、焼却することでごみの量を減らしてきた背景もあるようです。

 上勝町では、ごみの徹底分別により、焼却と埋立ごみが合わせて20%、資源回収が80%くらいです。ここまでできるのは、町民が徹底した資源回収に協力してくれているおかげです。藤井さんによると、よく小さい町だからできることでしょ?と言われることがあるようですが、実はそうでもないらしい。

 例えば、アメリカのサンフランシスコは人口80万人以上の大都市ですが、リサイクル率は78%もあります。注6そもそもごみの焼却施設がないらしい!実はサンフランシスコは上勝町と同じようにゼロ・ゼロウェイスト宣言をしている町で、環境問題に積極的に取り組んでいます。ごみ処理・運搬・リサイクルは市から免許を受けた民間業者が一手に引き受けていて、ごみの分別は3種類、ごみの収集は週に一度しかありません。注7

青(リサイクル):プラスチック、ガラス、かん、紙

緑(コンポスト):生ごみ、紙容器、庭の植物など

黒(埋め立て):埋立ごみ

サンフランシスコのごみ箱

 サンフランシスコ以外にも、海外には町ぐるみで環境問題に取り組む地域はたくさんあります。ということは、他の市町村も町にあった独自の方法を見つけることができれば、日本の焼却・埋立ごみはかなり減らせるはずです!

「リデュース、リユース、リサイクル」この順番けっこう大事なんです

 全国の「一人一日のごみ排出量(g/人日)」や「リサイクル率」注3は以下のようになっています。

神山町は全国でも3位というごみの少なさ!
上勝町のごみ排出量は徳島県内2位、リサイクル率は全国3位です。リサイクルに関しては、2003年の「ゼロ・ウェイスト宣言」からできるだけ焼却・埋立ごみを減らす努力をしてきた成果が出ていて、ここ数年は80%前後をキープしています。しかし、いまのリサイクル技術では上勝町がこれ以上リサイクルを進めるのが難しいのが現状です。そこで、新宣言をもって、上勝町は次のステップへ進みます!これからは企業や大学のみなさんと連携しながら、そもそもごみになるものを減らす(リデュース)取組を目指していきます。(詳しくはブログの『「ゼロ・ゼロウェイスト宣言」2030年に向けて』へ)
 ということで、これまでの上勝町の3Rを簡単におさらいです。

リデュース

布おむつ:H29年、紙おむつ削減を目的に開始。希望者に布おむつのスターターセットを配布。

ノー・レジ袋キャンペーン:H30年、レジ袋削減を目的に開始。マイバッグを推奨。

量り売り:H30年、容器包装削減を目的に開始。マイ容器持参の買い物を推奨。

リユース

くるくる食器:H15年、使い捨て容器削減を目的に開始。町内イベントなどで「リユース食器」を無料貸出。

くるくるショップ:H18年、もったいないをなくすことを目的に開始。まだ使えるものを持ち込み、必要な人に持ち帰ってもらう。(持ち込み:町民限定 持ち帰り:誰でもOK)

くるくる工房:H19年、もったいないをなくすことを目的にに開始。不要になった布や綿を地元のおばあちゃんたちがリメイクしれ販売。ぼけ防止もかねる。

リサイクル

ごみの45分別による資源回収の推進。上勝町と起業との連携による資源回収も実施しています。

テラサイクル×㈱ライオン:使用済み歯ブラシを回収し、植木鉢などの新しいプラスチックに生まれ変わらせています。

テラサイクル×㈱花王:シャンプー等の詰め替えパウチを回収し、「おかえりブロック」という商品に生まれ変わっています。

ゼロ・ウェイストな「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」

 昨年4月、ごみステーションがリニューアルオープンし、ゴミステーション以外にもさまざまな機能を備えた施設になっています。建物自体も、廃材を使っていたり、内装に不要になった色とりどりの陶器を手作業でくだいて床に敷き詰めるなどの工夫がほどこされています。今回の研修もセンター内の「交流ホール」で行っていて、ここは普段は町内外問わず誰でも利用できるように開放されていて、休憩やちょっとしたミーティングにも利用できます。研修や会議、イベントなどをしたいときは貸し切ることもできます。環境関連の本やキッズスペースもあるんですよ!

 センターにあるインテリアのほとんどは、町民の方からご厚意で譲っていただいた窓や棚などの年代物の古道具、買い替えるタイミングだったホテルからは椅子や机、昔町の老人ホームで使っていたベッドなどでそろえられています。特徴的な窓のレイアウトは、この窓は誰の家のやつだったとか、年代物の古道具も昔は家にあったけど珍しくなったなぁと町民の話のネタになることもあるようです。小さい町なので、だいたいの人は知り合いっていうのがポイントです。建物についてもっと詳しく知りたいかたは、ブログの「WHY 建築設計的意義」で紹介されているのでぜひご覧ください。

まとめ

 最近では、企業による環境問題への取組も目立ちはじめ、スーパーでは店頭にリサイクル回収BOXが置かれているのをよくみかけます。みなさんもご存じの㈱花王さんでは、「リサイクリエーション」(リサイクルとクリエーションを合わせた造語)を通じて、循環型社会への新しいシステム・ライフスタイルの提案をしていて、地域やパートナー企業と協働し、洗剤やシャンプー等の使用済みの詰め替えパウチを回収し、再生樹脂に加工して提供する活動を推進しています。上勝町も2016年より回収をはじめ、3年間で回収した350kgを再生加工し「おかえりブロック」と名付けられたブロックがつくられました!「おかえりブロック」は町内の小学校や保育園のほか、ゼロ・ウェイストセンターのキッズスペースにも置かれているので、ぜひご覧ください。(詰め替えパウチの回収は現在も引き続き行っています。)

センター内にあるキッズスペースと「おかえりブロック」

参考