暮らしのなかのゼロ・ウェイスト(山本さん)

こんにちは。花粉症に目も鼻もやられている上勝町役場企画環境課の栗林です。

最近“マキネッタ”という本格的なコーヒーがお家でも楽しめる機器を手に入れました。気に入った理由としては、手軽でおいしいコーヒーが飲めること、フィルターがいらないこと、そしてコーヒーかすを消臭剤として活用できることの3ポイントです。買い物のときにごみになるものは少ないか?が基準になってきて、上勝での暮らしが馴染んできたのかな~と思います。

周りの人の暮らしのなかにはどんなゼロ・ウェイストがあるんだろう?と気になったので、ゼロ・ウェイストをきっかけに上勝町への移住を決めた方に、暮らしの中のゼロ・ウェイストを聞いてみました。

人物紹介

山本正勝さん(大字旭在住)         

2020年12月、大阪から男一人とネコ2匹とともに上勝町へ移住。

空き家バンクに登録されていた旭地区の物件へ入居。

仕事は製品設計。いまは自宅を中心にテレワーク中。

移住のきっかけは?

もともと地方での暮らしに憧れがありました。

里山での暮らしって、自分の食べるものは田畑でつくって、薪や炭で火を炊いてお風呂を沸かしたり、寒いときには暖をとる、そんな感じで自分の手で生活をつくっていくところに惹かれるものがありました。

どうして上勝町に?

移住先を検討しているなかで、上勝町の移住ポータルサイト“カミパラ”を見つけました。それで、上勝町のゼロ・ウェイストの取組みを知って、環境問題に積極的に取り組んでいることに魅力を感じ移住を決めました。

住みはじめてみてどうですか?

家の改修箇所は多かったですが、地域の業者さんが親切に対応してくれて、所有者の方やご近所さんも片づけやごみ出しなどいろいろと助けてくれたので、改修をはじめて約3か月後には住むことができました。年明けの寒波で、水道管が数日凍ったときは大変な思いもしましたが、来年からの対策を学べたし、何事も経験だなと思っています。家の改修を手伝ってくれたり、野菜や魚をおすそ分けしていただいたり、地域の寄り合いに呼んでもらえたりして、都会では経験できないコミュニティにあふれていることを感じます。

素敵なストーブがありますね

これは“だるまストーブ”。暖房や調理用に薪ストーブを導入しました。こういう昔ながらの道具が好きで、たまたま地域の方の伝手でゆずっていただけたもの。配管工事はどうやら町内にできる人がいるということで紹介してもらいました。1日かかるのかと思ったら、数時間でやってくれて、すぐに使えるようになりました。燃料として燃やしているのは改修のときに出た端材で、捨てるとなったら手間ですが、こうして有効活用できたのでしばらくは暖がとれそうでよかったです。

家での分別はどれくらいですか?

だいたい10種類くらい。キッチンによく出るもののごみ箱を設置していて、その他のものは玄関近くの土間に置いてあります。普段はレトルト食品を食べることが多いので廃プラがよくでますね。ごみ出しは廃プラがたまったらを基準にしていて、ゴミステーションに行くのは月に1回くらい、出かけるついでに行く感じです。

分別は大変じゃないですか?

分別が細かいので大変だなと思うことはもちろんありますが、こうした取組があって次のステップにつながっていくとも思っています。上勝町のゼロ・ウェイストは移住の決め手にもなっていて、その象徴としてゴミステーションの存在は大きいです。他にも、生ごみを堆肥化する処理機や自然エネルギー導入のための補助金制度があることも同様です。分別に関しては、煩雑にすることでごみを増やさないための抑止力にもなっていると思います。その反面、こうした取組に前向きではない町民の方も一定数はいると思うので、根本的な解決を目指すなら、そもそもごみにならない仕組みづくりが必要ですね。

補助金制度を活用して設置した電動生ごみ処理機の調子はどうですか?

生ごみは家で堆肥化する方針ということで、電動生ごみ処理機を購入しました。けっこう優秀で、ある程度(この前は魚4匹分)投入してもきれいに堆肥化できていました。2日に1回くらいの投入なのもあるかもしれませんが、いまのところ臭いも気にならないです。移住してやりたいことの1つに畑での野菜づくりがあって、最近開墾しはじめたので堆肥としての使い道もおいおいできる予定です。

同じく太陽熱ボイラーの調子はどうでしょう?

お風呂は太陽熱ボイラーで沸かしています…という想定だったのですが、山に囲まれていて日照時間が短かかったり寒さが厳しいせいか、冬場はあまり効果がないみたいでまだ1回しか使えていません。春先から使えるようになるのを楽しみにしています。日当たりが良いので、ゆくゆくは太陽光パネルを設置するのもいいかなと思っています。

現在はテレワーク中ということですが、どんなお仕事をされていますか?

プラスチック素材の製品設計をしています。家に3Dプリンタがあるので、パソコンでデザインしたデータを3Dプリンタに転送し、その場で試作品を製作しています。在宅でできる仕事ということもあり、移住のタイミングで仲間と会社を立ち上げたので、いまは生活の場を整えながら仕事とのバランスを調整しているところです。

3Dプリンタの材料はプラスチック素材のなかでも、PLA樹脂(ポリ乳酸)とうものを使用していて、トウモロコシやジャガイモなどに含まれるでんぷんを原料とした植物由来のプラスチック素材です。コンポストに埋めれば自然に還すこともできるので環境にも優しい。クッキーの型や判子、ドリンクホルダーなどさまざまなものをつくることができます。バイクの部品が欠損してしまったときは、自分で設計して3Dプリントしたものをはめ込んだりもしています。いまちょうど3Dプリントしているのがあるけど…あ、失敗してる 笑

“PLA樹脂(ポリ乳酸)について”

ABS樹脂(石油由来の合成樹脂で現在の工業製品に広く使われている)と比べて耐熱性や耐久性は弱いが、生成過程においてカーボンニュートラル(二酸化炭素の排出と吸収がプラスマイナスゼロになる仕組み)という特性があり、また植物由来という性質上、堆肥などの微生物が存在するコンポストに埋めれば分解することができるなど、環境負荷が少ないことで注目されている。(2021/02/24 PLA樹脂(ポリ乳酸)の特性と用途 加工と新素材の開発 (i-maker.jp) 参照)

“自然に還るプラスチック素材”は教育にもつながりそうですね。

子どもたちにクッキーの型をデザインしてもらって、それを3Dプリントしたものでクッキーを作ったりするのはできるかも。その過程で環境問題について考えたり、ものづくりの面白さを知ってもらうきっかけづくりにできるかもしれません。自分のできることでゼロ・ウェイストに携わる機会があれば協力していきたいですね。

ものづくりをするなかでゼロ・ウェイストを意識することはありますか?

廃棄することを前提にしたくないと考えています。使い捨てではなく、使い終わってもまた資源として循環し続けられるものづくりをしていきたいですね。再生樹脂やバイオマスプラスチックなどを取り入れている企業が県内にもあるので、気になる企業があれば出かけていって情報収集をしています。仕事でプラスチックを扱っているので、廃プラを回収して再生樹脂にリサイクルしている企業なんかは気になって見学にいってきました。プラスチック=悪ではなく、その利便性を環境負荷の少ないかたちで利用できる方法を取り入れていきたいと考えています。

町全体がこうであればいいなという取組の提案はありますか?

〇町内で販売する商品の容器包装が生分解性またはプラスチック以外の素材になる

〇町内で販売する飲料製品(自販機を除く)はマイ容器を持参して量り売りの利用ができる

〇生ごみは各集落に収集場所を設置して町内に設置したプラントで堆肥化できる

〇阿波晩茶や上勝産の飲料品をドリンクスタンド設置して誰もが無料で飲めるようになる

〇ごみ収集の一部有料化

上勝町は日本の自治体として初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」をしたこともあり、積極的に新しいことにチャレンジして他の自治体のお手本になってほしいと思います。例えばごみの持ち込み制度に関しても、一部有料化の回収を取り入れて、アプリとかで引き取りのきてほしい日・種類・量を設定することができて、利用料は月額制にするとか。持ち込みの手間が省けて、費用を見える化することで、できるだけごみがでない工夫を考える仕組みをつくることができたらいいなと。もちろん持ち込みの場合は無料のままです。

上勝町でこれからどんな暮らしがしたいですか?

野菜づくりもしたいし、田んぼでお米づくりもしたい、あとは木炭づくりもやってみたいです。みんな野菜やお米は自分でつくっているし、すぐ近くに木炭をつくれる人もいて、みんな暮らしを自分でつくっている感じがします。みんなが当たり前にやっている里山での暮らしが、いつか自分にもできたらいいなと思います。他にも、町内の食文化の保存や新たな特産品開発などにも興味があるので、郷土料理づくりとか、ゆずやゆこうを活かした特産品開発、みたいなイベントがあれば参加してみたいです。そして、こうした営みや技術、文化のある暮らしを続けていける環境をこれからも上勝町に残していきたいと思っています。30年先、50年先も上勝町があり続けるために、自分ができることは協力したいし、町としてもさまざまな企業と連携してチャレンジを続けてほしいと思います。

上勝町にきてブログを開設した山本さん。暮らしの様子をこちらからもご覧ください。→ブログへ