01.
自然に還す暮らし~野焼き時代
生活に必要なものは木や竹などで作り、ごみはほとんど出ませんでした。
戦後、プラスチックなどの工業製品が普及し始め、
家庭では処理しきれなくなってくると大規模な野焼きが始まりました。
第二次世界大戦以前、上勝町の家庭から出るごみは、生ごみ、紙、金属、ガラスなどでした。生ごみは家畜のえさ、堆肥化、川への投棄などで処理され、金属、ガラス類には買い取り回収がありました。新聞紙は商店が品物を包むのに使い、ちり紙も焚き付けとして利用するなどし、ごみになるものはほとんどなかったといいます。また、桶や籠などの日用品も、身近にある木や竹などを使って作り、修理をしながら使い、最後には燃やしたり土に還すことができました。要らない物は大雨のときに川へ流したという話も聞きますが、自然に還る素材だからできたことともいえるでしょう。
1974年 日比ヶ谷残土処理場を、暫定ごみ処理場として利用開始
1991年 生ごみ処理容器(コンポスト)購入補助制度開始(自己負担 3,100 円) ~1999 年まで
1994年 「上勝町リサイクルタウン計画」策定
1995年 電動生ごみ処理機(ゴミナイス)購入補助制度開始(自己負担 1 万円)
1996年 日比ヶ谷処理場一部閉鎖(不燃・粗大ごみの埋立廃止)
1997年 日比ヶ谷ゴミステーション開設、9 分別開始
02.
小型焼却炉~脱焼却炉時代
2000年には廃棄物処理法改正で禁止されることが決まりました。
そこで上勝町では2基の小型焼却炉を導入します。
しかし、その焼却炉もわずか3年で使用できなくなり、
町は本格的に多分別の道を歩み始めました。
1998年、野焼き場閉鎖の方針を決めた町は、ごみの量に合った小型焼却炉を2基導入することになりました。しかし焼却炉で燃やした後の灰は3日ごとにドラム缶1杯分たまり、その処理に困るという新たな問題が発生します。燃やすごみを少しでも減らそうと、担当職員はリサイクルできそうな物の引き取り先を懸命に探し、1998年の末には分別の種類は25種類にまで増えました。
上勝町が小型焼却炉を設置したのは、ちょうど有害物質ダイオキシンが大きな社会問題となっていた頃でした。2基の焼却炉から排出されるダイオキシンを測定すると、1基が不適正という結果が出ました。適正だったもう1基を使い続けることもできましたが、当時の町長は焼却炉を2基とも閉鎖し、燃やすごみをもっと減らすために、分別を更に増やすという決断をしました。それが2000年12月のことです。しかし、町民に説明する猶予は1ヶ月しかありませんでした。担当課の職員は数名で全55集落を回り、必死に説明をしたそうです。その想いが届いたのか大きな混乱や反対運動もなく、2001年1月に焼却炉は閉鎖され、33分別、そして4月から35分別が始まりました。
1998年 小型焼却炉2基設置、日比ヶ谷焼却場(野焼き)閉鎖
高齢者のごみ運搬を支援するボランティア団体「利再来上勝」が活動開始
2001年 小型焼却炉を閉鎖、日比ヶ谷ゴミステーションが毎日開設、33分別(のちに35分別)開始
03.
ゼロ・ウェイスト宣言〜リサイクル・リユース推進へ
上勝町はごみの多分別という独自の道を歩み始めました。
そんな時、一人のアメリカ人化学者との出会いが、
上勝町を日本初のゼロ・ウェイスト宣言へ導きました。
上勝町は法規制や財政上の理由から「ごみをできるだけ燃やさないために多分別をする」という独自のごみ処理を始めました。その噂を聞きつけてやってきたのが、アメリカでゼロ・ウェイストを提唱し、焼却炉の建設計画を中止に導いてきた化学者のポール・コネット博士です。博士が町で行った講演で、町民は初めて「ゼロ・ウェイスト」の理念を知り、話に釘づけになりました。そして、博士の勧めを受けた上勝町は2003年、日本の自治体として初めてのゼロ・ウェイスト宣言を行いました。町外の方からはよく、「宣言をしたから多分別をはじめた」と誤解をされますが、上勝町では宣言よりも前から多分別を行っており、その素地があったからこそ宣言につながったのです。
ゼロ・ウェイストを推進するうえで、リサイクルよりも大事なのがリユースです。ゼロ・ウェイストアカデミーは「くるくるショップ」という無料のリサイクルショップをオープンさせました。ごみを捨てに来たついでにくるくるショップに寄ることは、町民の楽しみの一つにもなっています。
また、「くるくる工房」というリメイクショップも開設され、使用済み鯉のぼりを利用した商品が人気です。ほかにも、イベントに使うリユース食器の無料貸出なども始まりました。
2005年 NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー発足
2006年 リユース推進拠点「くるくるショップ」開設
2007年 リメイクショップ「くるくる工房」開設
2008年 リユース食器の無料貸出開始
2013年 雑紙ポイントキャンペーン開始
2016年 公式分別数を34分別から13種類45分別に変更
リサイクル率が初の80%台達成
04.
ゼロ・ウェイスト推進〜リデュース、企業連携の時代へ
これからの目標はそもそもごみになる物を減らすこと。
そのために町内の事業所や大手メーカーとも連携し、
様々な取り組みを始めています。
上勝町民は徹底した分別に協力してくれています。リサイクル率は、消費者にできるレベルの限界に近づいています。ごみとなるものを根本的に減らすため、一番大事なことはリデュース(そもそもごみになる物を減らす)です。
上勝町内では事業所の協力で、量り売りなど容器包装を必要としない売り方や、レジ袋の削減を推進してきました。また、どうしても燃やさなければならないものの一つである使用済み紙おむつを減らすため、子どもの産まれた家庭には布おむつセットをプレゼントする制度もできました。布おむつの使い方の説明を通して、ごみの減量だけでなく子育てのサポートにも取り組んでいます。
上勝町は日本の自治体として初めてゼロ・ウェイスト宣言を行った自覚と誇りを持っています。私たちの取り組みをさらに多くの人に知ってもらうため、2020年に「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」という複合施設を新設しました。この小さな町から、ゼロ・ウェイストの輪を世界に広げていきたいと考えています。
2017年 ゼロ・ウェイスト認証開始
量り売り実証実験開始
布おむつスターターセット進呈開始
2018年 ノー・レジ袋キャンペーン開始
2020年 上勝町ゼロ・ウェイストセンター完成